特集
耳と手。人の五感を駆使した点検で、高速道路の異変を見抜く
今回のメンバー
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横山 将太
長岡点検事務所 点検課
社員の所属・記事内容は、記事公開日当時のものです。
高速道路の点検は、人でいえば健康診断。点検ハンマーによる打音と触診でわずかな異変を見抜き、その後、調査や修理・修繕などを担当する部署へリレーします。安全管理のスタートなので「見逃さないこと」が信条です。
安全を守るサイクルのスタートを担う
点検で一番重要なのは、高速道路を支える道路構造物の異変を見逃さないことです。私たちが担当するのは、高速道路の橋梁・トンネル・カルバートボックス・標識などの詳細点検業務です。新潟県で一番初めに開通した北陸自動車道をはじめ、高速道路構造物の高齢化が深刻化しています。私たちが判定した点検結果は、変状の進行度に応じた補修工事の優先順位や規模を決めるときの重要材料に当たるので、正しく見極めること、決して見逃さないことが私たちの使命だと思っています。
多種多様な現場でコンクリートを叩く
冬季をのぞく4月から11月に、高速道路の橋梁・トンネル・カルバートボックス・標識などを点検します。点検は、対象に可能な限り接近して行う「近接目視」と点検ハンマーや回転式打音器具を用いて行う「触診・打音」にて行います。検査対象の構造物を打音し、耳で反響を、手で振動を確かめて、コンクリート内部に空洞があるかどうか、どれほどの大きさかを探り、構造物の「異変」を確認します。その結果を点検管理システムに入力し、点検データを基に構造物の健全性を総合的に診断するところまでが私たちの担当です。
構造物の点検をする前には、構造種別や構造物周辺の環境、過去の点検履歴などを事前に確認しますが「現場に行くまではわからない」というのが実際のところです。施工年によって工法や構造の特色があれば、同様の工法でも周辺の環境によって劣化の進行度が異なります。劣化している箇所や部材によっては構造物の健全性に影響を及ぼすため、構造や環境などから、劣化要因の予測をする難しさを経験・知識不足から痛感しています。
それでも4年間の経験を積んだ今は、先輩方から教わった知識などを基に現場の状況や図面等から自分なりに劣化要因を予測できるようになってきたと手応えを感じています。今後、さらに工法や施工についての知識を身に付けて、総合的な判断ができるようになっていきたいと思います。
自分で直接見て触る大切さ
現在は、近接目視と同等の情報を得ることができる技術として高解像度カメラを用いることもありますが、点検の主体は人の目や耳であり、技術者の経験や知識がモノをいう仕事だと考えています。ここが一番、やりがいを感じるところです。点検での異変を判断するにあたって、構造や部材の特徴であったり土地や周辺環境によって考え方や重要度が変化します。そういった様々な要因と現場での状態を合わせた判断が必要となるため、難しいと感じる反面、更に様々な経験を積んだうえでできるようになった時の達成感は大きいです。
「学んでいこう」という気持ちが大切
建設系の学校でもコンクリートの打音検査を学んだ人はいないでしょうから、入社後にみんながイチからスタートします。ですから、「学んでいこう」という気持ちが大事だと思います。現場で学び、経験を積みながら高速道路点検士などの様々な資格取得に挑戦し、自分のできる領域を広げていくことで仕事のやりがいに繋がっていくと考えています。個人的には、橋梁やトンネルを点検するときに高所点検用の大型車両や特殊車両に乗るのも仕事の魅力のひとつです。